出版物一覧・注文

医師の資産運用

 

逆張りこそ成功の秘訣

 億万長者が実践している長期投資とは、広い意味での「逆張り」です。市場というものは短期の材料で動くのに、長期的な視野で投資するのは主流に反するからです。けれども実は「主流に反する」ことこそ大事なので、大勢に流されれば高く買って安く売る羽目になります。著名投資家であるウォーレン・バフェット氏やジム・ロジャース氏の投資姿勢も一言で言えば「逆張り」でしょう。逆張りこそ成功の秘訣なのです。

 しかし逆張りを貫くのは、言うほどに簡単ではありません。株価の動きに一喜一憂しない「長期投資」と思って始めたとしても、株価が半値になってしまったらどうしますか。

 

「逆張り投資家は、主流から外れたポジションをとるにしても、守るにしても、信念を求められる。投資の基本原則を固く信じて、原則に従って合理的にポートフォリオを構築しないかぎり、たいてい途中で腰が引けて、目もあてられない結果を招く」(下線は引用者)

 

 イェール大学の教授であり最高投資責任者として大学基金を15年で10億ドルから70億ドルにしたことで知られるデイビッド・スウェンセンは、その著書『イェール大学CFOに学ぶ投資哲学』で、こう述べています。逆張りが成功の秘訣だとしても、聞きかじりで逆張りポジションをとっただけの信念を欠いた投資家は、「いずれ市場の逆風や寒風に耐えきれなくなる」と言うのです。結果、「損切り」と称して市場から退場してしまいます。

 

信念、根気、精神力

株式投資のもたらす長期的なリターンを考慮するなら、これは明らかに合理的な行動ではありません。スウェンセン教授によれば、この200年足らずの間に、株式投資のもたらしたリターンは約1000万倍にもなるからです。これは、同期間の長期国債リターンの約1000倍、インフレ率の70万倍にも達する驚異的な数字です。幾度かの暴落を経験したとはいえ、19世紀初頭に1ドルを株式に投資すれば21世紀初頭には1000万ドルになっていると言います。

ところが、同時期に預金した1ドルは200年たっても10ドルちょっとにしかならない計算になるのです。その差は何と100万倍(米国株の場合)。「元本保証のコスト」がこんなにも高く付くとは。

 だとすると重要なのは、一時的な「市場の逆風や寒風」にもかかわらず、市場にとどまり続けるための信念であり、根気であり、精神力だということになります。

 

「マーケット・タイミングは敗者の戦略である」

 しかし、こう言うと、「一時的に市場から撤退しても、また好調になった時に戻って来ればいいじゃないか」と思われるでしょう。すなわち、マーケット・タイミングをみて判断するということです。

一見これは合理的なように思えます。ところがスウェンセン教授は、こう断言するのです、「マーケット・タイミングは敗者の戦略である」。今が好機だと思った時は、往々にしてすでに遅い。マーケット・タイミングをはかる者は、結果的に、高値で買い、安値で売ることになると言うのです。

 さらに、銘柄選択により集中投資することも奨めていません。銘柄選択で成功したとしても、その多くは単に運が良かったに過ぎず、再現性は少ない。しかも銘柄選択は、個人投資家がとる戦略としては時間と労力がかかりすぎるので、そんな暇があるなら「仕事したほうが賢明」とも言えるのです。銘柄選択の成功者は華やかで目立つかも知れませんが、教授は「その陰には失敗した数多くの投資家たちの屍が横たわっている」とさえ言います。

 

アセット・アロケーションとリバランス

 つまり同じ「逆張り」とは言っても、マーケット・タイミングも銘柄選択も短期指向の戦略であり、推奨されるものではない。これに対して、スウェンセン教授が奨める投資戦略は、長期的な視野に立ち、幅広く分散したアセット・アロケーション(資産配分)をとって、定期的に配分を見直す(リバランスする)というものです。

この場合、「リバランス」というのは、目標とする資産配分に戻すということで、例えば株式投資の比率を資産全体の40%と決めたら、1年後に株価上昇でこれが60%になっていたら20%を売って40%に戻す。逆に、株価下落で20%になっていたら買い増して40%に戻す、というものです。この戦略をとることにより、投資家は結果的に、高値で売り、安値で買うことができ、リスクを抑えてリターンを高めることができると言います。

 「投資収益の90%以上はアセット・アロケーション(資産配分)によってもたらされる」というのは、現代投資理論の定説でもあります。

 

「約8.4時間」の意味

 こう言うと好いことずくめのようですが、この戦略の欠点は、何と言っても地味で、事務的で、しかも心理的な抵抗が強いことです。皆が買い、市場が上昇していれば買いたくなるものですし、反対に暴落すれば不安に駆られ、売りたくなるのが人情でしょう。この自然な心理に抗して、淡々とリバランスするのは、そう簡単なことではありません。「もう少し様子を見よう」と、ついついマーケット・タイミングの罠にはまってしまう。スウェンセン教授の言う「敗者の戦略」に陥るのです。

 信念、根気、精神力が重要とされるゆえんです。

 さて、ここで『となりの億万長者』に戻ると、アメリカの億万長者(蓄財優等生)は、月平均で約8.4時間を資産運用に使っています。これは、蓄財劣等生(収入はあっても蓄財できない人々)の約2倍とはいえ、銘柄選択戦略をとるには短すぎる時間です。また、株式の売買が11回にも満たないということは、億万長者がマーケット・タイミングの罠にもはまっていないことを意味します。

さらに、暴落で投げ売りしたり、市場から退場したりすることもありません。自営業者として常にリスクにさらされ、ある意味リスクに慣れていますから、株価が多少下がったくらいでアタフタしないのだと言います。

 では、彼らが単に投資資産をほったらかしているのかと言えば、それも違います。月8.4時間というのは、学習時間として十分意味がある時間だからです。

 

次へ

戻る

 

**日本語が通じるスイスのプライベートバンクの情報を無料でご提供致しております。詳しくはお問い合わせ下さい(メール: mz.group@e-law-international.com )

**本サイトの金融関係記事は情報の提供のみを目的としており、本サイトでは、預金、投資信託等も含め、いかなる金融商品の販売、仲介、推奨、勧誘も致しません。

 

[HOME]