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医師の資産運用

 

「信念、根気、精神力」を養うために

多くの人がそうだと思いますが、投資や資産運用に興味を持ち始めたとき、まず手に取るのが『儲かる株はこれだ』的な情報でしょう。その次はチャートなど、マーケット・タイミングをいかに測るかといった短期的手法に関心が向きます。やはり短期に儲けたいと思うのが人情だからです。けれども学習が進むにつれて、これが「敗者の戦略」であることに気付きます。学習時間が短い人はなかなか短期的な観点から抜け出せませんが、学習時間が長ければ、それだけ早く長期的な見方に到達できますから、虎の子の資産を毀損せずにすむのです。

しかも「短期に儲けたい」という欲求は人間の自然な心理に根ざし、事あるごとに表れますから、少しずつでも学習を続けて、これに抗するための信念、根気、精神力を養わなければなりません。多くの億万長者(蓄財優等生)が、「1年以上株の売買をしない」にもかかわらず、毎月投資本を読み、セミナーに行き、投資アドバイザーに相談する意味は、おそらくここにあります。そうしなければ、巷にあふれる「短期で儲ける」誘惑に負けてしまうからです。

思えば、冒頭にあげた投資信託の損失、日本の大学基金のデリバティブ損失など、いずれも「長期への信念」が不十分で、「短期の欲望/恐怖」に負けたことが根本にあると言えるでしょう。長期への信念が十分なら、投資信託に評価損が出たからといって安易に市場から退場することもないし、今儲かりそうだからといってマーケット・タイミングがすべてとも言えるデリバティブや仕組み債に集中投資するわけがありません。

 

金融機関の短期指向

ところで、ここで知っておくべきことは、金融機関の多くが実は短期指向であることでしょう。売買手数料が収益源である証券会社、FX会社などは、その典型です。銀行などでも、上場企業はその傾向が強いと言えます。1年ごと、四半期ごとに結果を出さなければならないので当然でしょう。証券会社でしかも上場企業となると、短期指向ここに極まれりという感じです。短期指向の金融機関は、当然ながら「短期で儲ける」欲望を煽りますが、これは投資家の利益と相容れません。すでに見たように短期投資はリスクが高く、これで勝てる投資家は少ないからです。

こうして短期勝負に出て負けた投資家は、結果的に金融機関の食い物にされたのと同じことになるのです。

 

金融機関の「収益構造」をみる

ここで問われるべきは短期を煽る金融機関の「良心」というよりは、むしろ「収益構造」でしょう。そもそも収益構造が投資家の利益に合致しないことが問題だからです。収益構造が投資家の利益に合致する、つまり投資家を勝たせることが収益の源泉でないならば、そんな金融機関に期待する方が間違っているのです。そして投資家を勝たせるには、金融機関自身が長期指向にならなければなりません。

長期指向の金融機関がないわけではありません。例えば、長期投資の文化のあるスイスでは、プライベートバンクや、プライベートバンクから業務委託を受けている国際的な投資アドバイザー、プライベートバンカー等も長期指向です。

長期指向かどうかは、収益構造、すなわち手数料体系を見ることで判断できます。長期指向の金融機関では、売買手数料などより、運用資産全体に薄く課金する形になっていますので、運用が成功し、顧客の資産が増加すれば金融機関の収益も増加する仕組みになっています(同様の収益構造をとる日本のいわゆるラップ口座では手数料率が高いため、顧客資産がなかなか増えません)。プライベートバンクの利益は、当初は少ないのですが、顧客資産が増大することにより、長期的には法外な手数料をとるラップ口座よりも利益が出るようになっています。

むしろ最近の悩みは、顧客の方が短期指向になり、運用する側の長期指向になかなか付き合ってくれないということかも知れません。

 

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