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コール預金とは何か?

外貨預金と外貨MMFの利点を併せ持つ

 

 

MMFは元本保証ではない

 今から20年ほども昔のこと、証券会社が中期国債ファンドを盛んに宣伝し、MMFが初めて出てきた頃には、それらの商品性は非常に新鮮でした。「普通預金のようにいつでも引き出すことが可能で、しかも定期預金なみの利息がつく」というキャッチ・フレーズには、人々の関心を惹き付けるのに十分な魅力がありました。

当時まだ金利は現在ほど低くはなく、「定期預金なみ」という言葉にもなにがしかの重みが感じられたからです。

 証券会社の店頭には「中期国債ファンド」(略して「中国ファンド」、ちゅうこくファンド。チャイナファンドではない)のポスターが貼られてあり、4%とか3.5%といった「予想利回り」の文字が大きく太く強調されていました。その「予想」という言葉に何だか怪訝な印象があったのは、顧客にはこれらの金融商品が「投資信託である」という認識が全くなかったからでしょう。

 ところが、時代が下って2001年も暮れようとしている頃、米国エンロン社の破綻などが原因でMMFが元本割れとなったとき、人々はこれら安全と信じきっていた金融商品が、実は利回りどころか元本さえも保証されない「投資信託」であったということを、否応なく思い知らされたのです。

証券会社の人なら「そんなことは最初から分かっていたはずだ」と言うかも知れません。しかし、多くの人々は、これらのかつて「定期預金なみ」と言われた金利も、リスク商品であるが故の「リスク・プレミアム」であったとこのとき初めて気付いたのだと思います。

 

外貨預金と外貨MMFの比較

 現在では、円建てMMFが金融商品として話題になることはまれでしょう。

しかし、「外貨MMF」は、外貨預金の金利に飽き足らなくなった人々の間で注目されているようです。インターネット上では、外貨預金と外貨MMFとの比較といった記事もよく見かけます。そして、外貨預金と外貨MMFを比較した場合は、概ね外貨MMFに軍配が上がるとされるようです。

外貨預金と比較した場合の外貨MMFの利点とは、まず「金利(分配率)が高い」、そして「為替手数料が安い」ということです。そこで、現在(20078月の時点)で米ドルの外貨預金と外貨MMFを比べてみると、国内のA銀行の米ドル定期6ヶ月ものの預金金利が年利3.43%B証券の米ドル建てMMFの実績分配率が4.642%ですから、確かに、かなりの開きがあることが分かります。

しかしながら、これには明らかな理由があります。外貨預金に比べて、外貨MMFの分配率が比較的高いのは、先にも見たように、これが投資信託という「リスク商品」であり、従って「リスク・プレミアム」を含んでいる分だけ利回りが高くなるからです。

MMFという金融商品は、円建てであれ外貨建てであれ、いくら安全らしくみえるとしても結局金利も元本も保証されないということは、肝に銘じておかなければなりません。

 

「ローリスク・ローリターン」にも種類がある

さて、ローリスクである「外貨預金」は金利が低く、一定のリスクのある「外貨MMF」は利回りが比較的高くなるというのは、一見すると金融の原則に適っており、妥当であるように見えます。

ところが、実はその「妥当性」とは、日本の金融界という「閉じた世界」の中での妥当性にすぎない、と言えば驚かれるでしょうか。

もちろん、日本でもどこでも「ローリスクはローリターンである」という原則に変わりはありません。「ローリスク・ハイリターン」は金融の世界ではあり得ないことです。

けれども、同じ「ローリターン」とは言っても、「妥当とみなされるローリターン」のレベルが、日本と世界とでは異なっているというのも、また現実なのです。

前置きが長くなりました。結論を言いましょう。

 すなわち、ひとたび目を海外に転じてみれば、「外貨MMFなみ」に高金利で、いつでも引き出し(解約)が可能であり、しかも「預金」として「元本」だけでなく「金利」まで保証されるという商品が存在しているのです。

 一言で言えば、外貨預金と外貨MMFの利点だけを併せ持ったものです。利便さと収益性の観点からして、まさに、「夢の金融商品」のように思われないでしょうか。

 

「ハイリターンに見える」理由

しかし、これは決して夢などではなく、特別に不思議なものでもありません。これもまた、間違いなく「ローリスク・ローリターン」の商品なのです。

 これが日本の外貨預金などと比較して「ハイリターンに見える」大きな理由の一つは、国際標準から見て「日本の外貨預金の金利水準が低すぎる」ことです。

換言すれば、外貨預金などの日本の金融商品に見られる「ローリターン」は、海外から見れば単なるローリターンではなく「超」の付くローリターンであって、その意味で「妥当性を欠く」、すなわち「商品の性質に見合う適正なローリターンのレベルをさらに下回っている」のです。

 

コール預金とは何か

 さて、ここで紹介する「コール預金」(Call Deposit)とは、上記に述べた外貨預金と外貨MMFの利点を併せ持った「妥当なローリスク・ローリターン商品」です。

この「コール預金」を一言で説明するなら、言わば「プライベートバンクの普通預金」となるでしょう。

 言うまでもありませんが、日本では「普通預金」と言えば、元本は一応銀行が(その信用力の範囲で)保証してくれますが、超低金利と決まっています。

日本円よりは高金利というイメージのある外貨預金にしても、「外貨普通預金」となると、日本では「年利0.1%」という超超超低水準であり、下手をすれば日本円よりも低利率になってしまう可能性さえあります。

残念ながら、これが日本の現実です。

 

リスク・プレミアムがなくても・・・

ところが、「コール預金」の場合は、普通預金のようにいつでも引き出し(解約)ができて、しかも年利換算で4.625%もの利子が付くのです(20078月時点の米ドルのコール預金金利。Private Bank Cによる)[1]。これは、国内B証券の米ドル建てMMFの実績分配率よりはやや低いのですが、対する外貨MMFが元本保証のないリスク商品であり、「リスク・プレミアム」の分だけ分配率が高くなることを考慮すれば、かなりの好水準であると言えます。

重要なことは、外貨MMFと異なり、「コール預金」とは、あくまでも「預金」なのであって、投資信託のような「リスク商品」ではないということです[2]。これは、両者が本質的に異なる性質の金融商品だということを意味します。「コール預金」は、元本ばかりか金利分まで保証されており、「リスク・プレミアム」はないのです。

 [1]このときの米ドルの政策金利(Federal Fund Rate)5.25%。なお、預金金利が政策金利を超えることは考えにくい。また、コール預金は普通預金と同様の変動金利商品なので、金利は保証されるとしても政策金利の変更などによって随時変動することに注意しなければならない。

 [2]ここでいうリスクには、他通貨(例えば日本円)から転換する際の為替変動リスクは含まれない。従って、この場合の「リスク商品でない」とは、米ドル建てコール預金の場合なら「米ドルベースでの元本と金利が保証される」という意味である。

 

経営の効率性と誠意

 では、何故、海外では「コール預金」のような商品を開発できるのでしょうか。それは、これがプライベートバンクの運用する信託預金の一種であるからです。

ここでは詳しい説明は省きますが、一つには、経営の効率性の問題があります。また、それと関連して、預け入れの単位が日本の金融機関が運用する外貨預金や外貨MMFに比較して格段に大きいということも理由として挙げられます。

「コール預金」の利便さと高い預金金利水準が示すものそれは、銀行の経営を十分に効率化するなら、たとえ「ローリスク・ローリターン」の範囲内であっても「これほどまでに顧客に還元できるのだ」ということなのです。

例えば、Private Bank C(仮称)のようなスイスのプライベートバンク専門銀行の場合は、そもそも小口顧客が存在しません。ですから、日本のリテールバンクのプライベートバンキング部門がしているような、「大口の顧客からむしりとった利益を、採算の合わない小口部門に充当する」といったビジネス・モデルとは基本的に無縁なのです。このような銀行が日本の金融機関と比べてはるかに効率的な経営ができ、それだけ多くの顧客還元ができることに何の不思議もないでしょう。

一方、日本の銀行では外貨預金だけでなく、いわゆる「大口定期預金」のような大口・資産家向けの金融商品であっても、小口の商品に比べて大して有利でもなければ便利でもないことは明らかです。富裕層ビジネスが儲かりそうだからといって、小口顧客が大半を占めるという本質的に非効率な経営をしている日本の金融機関が「プライベートバンキング」の看板を掲げることには、顧客に対する誠意の欠如すら感じられます。

日本の銀行の外貨預金金利と、海外の銀行の預金金利との差は、経営効率の差であるだけでなく、このような顧客に対する「誠意の差」でもあると思うのですが、いかがでしょうか。

 

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