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パッカード財団とヒューレット財団の資産運用について

 

 

デイヴィッド & ルシール・パッカード財団

(David and Lucile Packard Foundation)

総資産に占める投資の比率 (2006)

74.4%

 投資に占めるヒューレット・パッカード社の普通株式の比率

 7.8%

 投資に占めるアジレント・テクノロジー社の普通株式の比率

 8.9%

 投資に占めるその他の株式の比率

68.8%

 

ウィリアム & フローラ・ヒューレット財団

(William and Flora Hewlett Foundation)

総資産に占める投資の比率 (2006)

97.0%

 投資に占めるヒューレット・パッカード社及びアジレント・テクノロジー社の普通株式の比率

 5.6%

 投資に占めるグローバル株式の比率

43.1%

 投資に占める代替投資等の比率

26.6%

  投資に占める国債等の比率

30.9%

 

 デイヴィッド・アンド・ルシール・パッカード財団は1964年に設立され、ウィリアム・アンド・フローラ・ヒューレット財団は1966年に活動を開始しています。その後、1996年にデイヴィッド・パッカード氏が死去した際に、パッカード財団は約40億ドルの遺贈を受けました。ヒューレット財団、パッカード財団は、それぞれヒューレット家、パッカード家の強い影響下にあるとともにHP社の大株主ですが、ケロッグ財団トラストの場合のように、HP社の支配的な株主とまでは行かないようです。

 パッカード財団については、資産全体に占める投資の割合が低いことが気になります。今回調査した同財団以外の巨大財団では、ほとんどの財団で投資比率は90パーセントを超えているのに対して、74パーセントは例外的と言える低い比率です。同財団では、投資比率が低い分だけ、現金又は現金相当物の割合が異様に高いのも特徴的です。さらに、HP社、AT社の株式とその他の株式を合わせると、すべての投資の85パーセントにもなり、株式投資に偏りすぎているという印象があります。

 これに比べると、ヒューレット財団のポートフォリオの方が均整がとれており、他の巨大財団の資産配分に近いようです。株式や債券の比率の高い保守的な資産配分のようですが、手法としてはデリバティブなどをよく用いていることが年次報告書などから読み取れます。報告書では、「財団の投資の目標は、財団のプログラム目的にとって適切なリスク水準により、資産の規模と実質的な(インフレ調整された)資金提供力を維持し成長させることである」と明言し、やみくもにリスクを恐れたりはしていません。すなわち、近代的なポートフォリオ理論に合わせた運用がなされています。

 これらの財団について気になるのは、2000年代初頭のいわゆる「ITバブル崩壊」が、財団の資産運用にどのような影響を与えたかです。聞くところによれば、IT企業が自社株を基にして設立した財団の中には、株価が80パーセントも下落したために助成活動を取りやめてしまったというところもあるようです。IT企業の雄であるHP社の富に基づくパッカード財団とヒューレット財団がいかにしてこれを乗り切ったか、当時の年次報告書や財務諸表が入手できたら検証してみたいところです。

 ちなみに、ヒューレット財団では金融資産すべての運用を外部に委託しているとのことです。資産配分に均整がとれているのは、おそらくそれが「プロの手」によるものだからでしょう。これに対して、パッカード財団については、その辺りの事情は明らかではありません。パッカード財団では、デイヴィッド・パッカード氏の3人の娘が受託者となっているとのことですが、その「私的な性格」が資産配分の「偏り」に反映しているという見方は穿ちすぎでしょうか。

 

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