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ウェルカム・トラストの資産運用について

 

 

ウェルカム・トラスト

(Wellcome Trust)

資産に占める投資の比率 (2006)

105.6%

 投資に占める株式(英国、海外)の比率

61.7%

 バイアウト・ファンド等の比率

22.2%

 

 英国のウェルカム・トラストは、アメリカ合衆国外にある助成財団としては最大のものの一つであり、創設者(出捐者)のヘンリー・ウェルカムが製薬会社のオーナーであったことから、医学や生物学の研究などを主な助成対象としています。ウェルカムの製薬会社はその後の合併や業界再編によりグラクソスミスクライン社(GlaxoSmithKline plc)となっていますが、トラストは1980年代後半よりウェルカム社株式の売却を続け、現在では製薬業界から独立した存在となっているようです。

 ウェルカム・トラストの年次報告書では、資産運用に関する考え方や実際の運用についてかなり詳細に述べられています。これによると、トラストの投資目標は、長期的に実質年率で6パーセントのリターンを生み出すこととされています。最近では、ITバブル崩壊の時期を除いて、この目標はほぼ達成されています。また、資産に占める投資の比率が100パーセントを超えているのは、トラストが自ら債券を発行しているため、資産からその分を差し引いた額よりも投資の方が大きくなるからのようです。

 このトラストは、今回調査した巨大助成財団のうち唯一、米国を拠点としていないものです。つまり、本拠地の通貨が基軸通貨の米ドルではないという意味で、日本の財団法人等の公益法人にとって参考となる要素が含まれています。

これについて、年次報告書では、トラストはもはや特定の地域に資産を配分するという戦略をとっていないため、投資における国内(イギリス)株式の比率は次第に少なくなっていると述べられています。実際、2006年の時点で、投資額の60パーセント超を株式で運用していますが、そのうち国内(イギリス)株式の比率は40パーセントもありません(投資全体からみた比率は23.6パーセント)。国債などの債券による運用はほとんどありませんから、結局、ほとんどの資金を本国以外に投資しているということになります。

 「リスクは投資プロセスにとって、なくてはならない一部分をなす」としてリスクを肯定した上で、徹底したリスク管理を行っているのもウェルカム・トラストの特徴です。バイアウト・ファンドやヘッジファンドに積極的に投資しているのもリスク管理の一環であり、これにより投資のリスク(ボラティリティ)は相当に抑えられるようになってきました。株式投資の一部をパッシブ運用にしてコストを低減する工夫もみられます。

 また、このトラストでは、投資リスク管理のためのガイドラインを作成して公表していますので、資産運用規程を作成する必要のある財団法人・社団法人等の公益法人にとっては参考になることと思います。

 

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