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米国統一プルーデント・インベスター法

(Uniform Prudent Investor Act)

 

目次

 

1条 プルーデント・インベスター・ルール

2条 注意の基準、ポートフォリオ戦略、リスク及びリターンの目標

3条 分散投資

4条 受託の開始に際しての義務

5条 忠実性

6条 公平性

7条 投資のコスト

8条 コンプライアンスの検討

9条 投資及び運用の職務の外部委託

10条 この法律の基準を意味する文言

11条 既存の信託への適用

12条 適用及び解釈の統一性

13条 略称

14条 可分性

15条 発効日

16条 削除

 

 解説

 他人の資産の信託を受け、その運用・投資を行なう受託者一般に対して、「プルーデント・インベスター(慎重な投資家、思慮深い投資家)」として行為するよう求める行動基準(Prudent Investor Rule)を法制化したものであり、現在アメリカ合衆国のほとんどの州で採用されるか、類似の法律が制定されています。

 「プルーデント・インベスター・ルール」は、19世紀以来の「プルーデント・マン・ルール(Prudent Man Rule)」を、現代の投資ポートフォリオ理論にあわせて見直したものです。日本語で書かれた解説ではしばしば両者の混同が見られますが、実はその内容はかなり異なっています。

 かつての「プルーデント・マン・ルール」では、特定の投資が「投機的」であり「無思慮な/慎重さを欠く(imprudent)もの」と考えられており、信託財産を投資・運用する受託者は、そのような「投機的な投資」さえ避けていれば、「慎重な/思慮深い人」としての行動要件を満たしていると見なされていました。インフレによる資産の実質的な目減りに対処することよりも元本を失わないことが重視されましたので、極端な話、資産をいかに運用するか考えることもなく、ただ預金しておけば受託者責任を果たすことができたのです。また、このような考え方に基づき、受託者が信託財産の運用を外部に委託することも原則として禁じられていました。預金しておくだけでいいのなら、わざわざ他人に依頼して管理させる必然性もないからです。

 ところが、現代ポートフォリオ理論の発展により、資産の運用・管理に対するこのような態度が不適切なものであり、かえって資産を損なう可能性が高いことが明らかになってきました。そこで、現代の投資理論にあわせて従前の基準を根本的に見直したのが、「プルーデント・インベスター・ルール」なのです。

 新しい行動基準では、それ自体で「投機的」であったり「無思慮な/慎重さを欠く」とみなされる投資は存在しないとされます。同様に、どんな場合にも必ず安全で、「これだけやっていれば大丈夫」という資産運用法も認められません。新しいルールでは、どんな投資・運用にも固有のリスクがあるとされ、預かり資産の運用・管理を行なう受託者は、いかなる場合もそのリスクとリターンの目標を勘案しつつ適切な資産の配分を考えなければならなくなりました。

例えば、かつて元本保証の預金は、何も考えずに預けていればたとえインフレで価値が目減りしても責任を問われない「免罪符」のようなものでしたが、現在では、「経済状況等に鑑みて適切と判断した結果として」預けるのでなければ、現実に価値の目減りがあったか否かにかかわりなく、受託者責任を問われるようになったのです。逆に、普通ハイリスクと考えられているヘッジファンドやプライベート・エクイティ投資であっても、適切な判断の結果としてポートフォリオの一部に組み込むならば、それで損失が出た場合も責任は問われません。重要なのは、リスク・リターン目標を考慮しつつ投資を分散し、全体として最適な資産配分(アセット・アロケーション)を組むことであって、組入れた個々の投資の出来不出来ではないからです。

従って、投資対象として適切なものを指定したり、逆に不適切なものを除外したりするために従来用いられていたリスト(legal list)も、「プルーデント・インベスター・ルール」の下では意味をなさなくなりました。

また、資産の運用・投資の外部委託に関しても、かつての「プルーデント・マン・ルール」とは逆に、むしろ推奨するように改められています。業として資産の運用、管理、投資などを行なう言わばプロの受託者の場合は別として、一般の受託者や資産の管理者(アメリカでは委託者の親族などが受託することもよくあります)の場合は、「経済状態等を考慮しながら、リスク・リターン目標にあわせて投資を分散し、全体として最適なアセット・アロケーションを組む」ことにかなり無理があるからです。

なお、助成財団をはじめとして、教育、医療などの公益目的を有する公益法人・非営利団体(財団、学校、病院、文化施設など)の資産運用に関しては、統一機関基金プルーデント・マネジメント法が別に定められていますが、基本的な思想は共通しています。

 

 

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