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公益法人の「資産運用規程」は何が問題か

 

 

Part 1 公益法人の資産運用のここが問題だ

 

非営利団体こそ資産運用を!!

 財団法人、社団法人などの公益法人、非営利団体は、一見すると「資産運用」とは接点がないように思われるかも知れません。しかし、実際には、その「非営利的」な性質と「資産運用」には切っても切れない本質的な結びつきがあります。

それと言うのも、これらの団体の活動資金の多くは出捐者、寄付者、会員などが善意で拠出した基金に基づいていますが、資産の運用が行なわれなければ、インフレ等の経済事情により、その基金は自然に滅失してしまう運命にあるからです。従って、公益法人、非営利団体が出捐者、寄付者、会員などの善意を最大限に生かし、活動を継続的に行なおうとするなら、資産運用は決して避けて通ることのできない道です。実際、欧米にある同種の団体では、投資や資産運用は、最重要事業の一つとして位置づけられています。

 日本でも、長引く低金利により、財団法人、社団法人の資産運用が課題として浮上して来ているようです。これらの団体の中には、自ら「資産運用規程」などの基本文書を定めて、資産や基金の運用に取り組むところが出始めています。

 

長期的な経済変動に耐えられるか

 ところが、欧米の非営利組織の資産運用について調査した眼で見ると、日本の公益法人等の定める「資産運用規程」などの文書の内容は、極めて奇妙な、あるいは偏っている、もしくは不適切なものであると言わざるを得ないのが実情です。

 公表されている「資産運用規程」の多くに共通している基本的な思想は、「元本に対するこだわり」と「元本割れリスクの回避」です。それ自体は間違っているわけではありません。運用の目的が短期で終了する活動に限られるとすれば、元本確保に固執することは重要だからです。ところが、今後10年、20年、50年あるいは100年という単位で事業活動を永続させることを目標としている場合は、運用元本の確保を過度に強調し、さらにこれにこだわるあまり運用対象まで文書で限定することには、大きな問題があると言えます。

 何故なら、預金、日本国国債、金銭信託、円建債券、公社債投資信託等の金融商品は、「元本割れのリスク」には比較的強いとされているものの、「インフレ・リスク」には弱く、これらのみで長期的な経済の変動に耐えられるとは到底思えないからです。

 

インフレ・リスクは存在しないか??

すなわち、財団法人、社団法人の多くは、おそらく長期的な活動の継続を目指していると思われるのに、元本割れのリスクを回避しようとするばかりに、株式などインフレ・リスクに強いとされる金融商品による運用の可能性を断ち切ってしまっているのです。なかには、「株式・株式投資信託は、元本の確保が不確定であるため、運用対象としてはならない」とご丁寧に明記した規程さえあるほどです。

これを作成した団体は「この世にはインフレ・リスクなど存在しない」と信じているのでしょうか。

けれども、経済の歴史を見て下さい。最近の日本経済のようなデフレは極めて稀な例外であって、インフレの方がむしろ常態であることが分かるはずです。

 一方、これらの規程では、「元本が保証される金融商品へのこだわり」が顕著に見られる割には、銀行など金融機関の破綻によるペイオフの問題が全くと言っていいほど顧慮されていないことも気になります。

 

アセット・アロケーションの欠如

 また、欧米の同種の文書では極めて重要なものとして強調されているのに、日本の公益法人・非営利団体の「資産運用規程」には見られない発想として、「資産クラスの分散」や「資産配分(アセット・アロケーション)」の考え方があります。

これを欠いていることは、日本の公益法人・非営利団体の「資産運用規程」の最大の問題とであると言っても過言ではありません。

何故なら、アセット・アロケーションなくして安全な資産運用などほとんど不可能であるからです。

ところが、すでに見たように、運用元本の確保を過度に強調した運用規程に基づいて組まれたポートフォリオは、当然ながら特定の資産クラスに偏ったものになりがちです。そこにアセット・アロケーションの考え方が入り込む余地はほとんどありません。

元本の確保にこだわったポートフォリオは、一見安全性を強調しているかのように見えますが、実は極めて危険でもあり得るということです。

 

すべての資産にはリスクがある

 これに対して欧米においては、財団、大学など非営利組織は、「リスクのない資産など存在しない」という事実に基づき資産運用を行なっています。

すへての資産にはリスクが伴います。すなわち、預金など「元本保証」の金融商品であっても「誰が保証するのか」という信用リスクの問題があります。仮に信用リスクがさほど心配の要らない水準にとどまるとしても、インフレのリスクはどうしても避けられません。

株価の変動が日々報道されるのと異なり、信用リスクは企業が赤字転落したり破綻しなければ顕在化しませんし、インフレが生じて預金の実質価値が目減りしても額面が減るわけではありません。

ですから、「目に付きやすいリスク」と「隠れたリスク」との違いはあります。

けれども、「資産からリスクが消えてなくなる」ことは決してないのです。

それが欧米の非営利組織の資産運用における大前提です。これに従えば、「元本保証だからノー・リスクである」と言うのは、一種のごまかしに過ぎないと言ってもいいと思います。

すなわち、リスクは徒にそこから逃げ回るべきものではありません。むしろ完全には回避できないことを認めた上で、「管理」しなければならないものなのです。

 

元本確保は違法??

リスクの性質の異なる資産を組み合わせるアセット・アロケーションはそのための有効な方法です。欧米の財団、大学など非営利組織の資産運用においては、これは当たり前の手法となっています。と言うよりも、非営利団体がこれを無視した資産運用を行なうことは違法とみなされることがあります。

すなわち、欧米の非営利組織が、現在の日本の財団法人、社団法人に見られるような「元本確保に偏した」極端な資産運用を行なったとすれば、不適切な運用として受託者責任を問われる可能性さえあるのです。

 

同じ非営利団体による資産運用と言っても、彼我の違いに驚かれたでしょうか。

しかし、金融の理論からすれば、欧米流の方が正しいのです。日本の公益法人による資産運用は、多くは明らかに偏っており、間違った金融知識に基づいています。

 では、何故、日本の財団法人、社団法人では、このような極端に偏った資産運用が行なわれ、しかもそれが「資産運用規程」として文書化されているのでしょうか。

 

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