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シティバンクがプライベートバンキングから撤退

日本でプライベートバンキングは可能か?

 

金融庁がシティバンクを処分

 2004918日付の日本経済新聞等によれば、シティバンク在日支店は、917日に発表された金融庁による処分を受けて、日本における富裕層の資産運用業務(プライベートバンキング)から撤退する方針を固めたということです。

 金融庁の処分は、プライベートバンキング業務を手掛ける国内4拠点の営業認可取消しや新規の外貨預金業務の一時停止等を含む厳しいものであり、これによりシティバンクは日本における主要業務からの撤退を余儀なくされました。

 日経新聞等の論調は、おおむねシティバンクに対して厳しいものでした。今後、同行が日本やヨーロッパでのレプュテーショナル・リスク(reputational risk)にさらされるのは避けられないようです。

 

事件の「隠された本質」とは?

 ただし、欧米でのプライベートバンキングの事情に多少とも詳しい者から見れば、問題の「本質」は、記事に表れたようなシティバンクの体質とは別のところにあると思われます。否むしろ、事件が一銀行の不祥事としてスキャンダラスに取り上げられるほど、事件の背景にある「本質」はかえって見えにくくなっているように思われるのです。

 その「本質」とは、一言で言えば、「日本の銀行制度の下では、本格的なプライベートバンキング業務を行うのは無理である」ということです。

 

ユニバーサル・バンキング

 例えば、日経新聞の記事では、金融庁による処分の理由の一つとして、シティバンクは「業務の垣根がある銀行でありながらグループの証券、保険部門と組織的に連携して不動産や海外保険商品、美術品への投資を勧誘」していたと述べられています。これは、現行の日本の銀行法に照らして違法な営業ではありますが、欧米では、このような営業を違法としない国は少なくないと思われます。銀行、証券、保険の垣根のない「ユニバーサル・バンキング(Universal Banking)」の制度が、とりわけスイスを初めとするヨーロッパでは一般的なものとして認められているからです。

 本格的なプライベートバンキングを行おうとするなら、ユニバーサル・バンキングは不可欠のシステムです。何故なら「総合的な金融資産ポートフォリオの管理」こそ、プライベートバンキングであるからです。そこに、預金、株式、債券、ファンド、保険商品等の「異業種にわたる商品」が含まれることに何の不思議もありません。

従って、この点に限って言えば、シティバンクは、「欧米で普通のことを日本でも行おうとした」に過ぎない、という見方も成り立つと思います(ただし、ハイリスク商品を十分な説明もなく勧誘するというシティバンクのやり方に、弁解の余地はありません。「顧客よりも自行の利益を優先する」という姿勢は、プライベートバンキングの本質とは正反対であって、言うまでもなくスイス等のプライベートバンクでは見られないものです。あえて言うなら「アメリカ的」な特徴と考えられるでしょう)

 

「日本でプライベートバンキングは不可能」

 このように欧米、とりわけユニバーサル・バンキングの普及しているヨーロッパでは「プライベートバンキング」に対する法的な障害はありません。ただし、私見では、「日本の銀行法」の下でこれをしようとしたところに、シティバンクの誤算があったと考えられます。

 日本は、プライベートバンキング市場が未開拓である国として先進国でも珍しい存在です。今まで、スイスを初めとする欧米のプライベートバンクの多くが日本市場への参入を検討しましたが、日本での銀行業務は断念しています。その背景には、「日本の銀行制度の下ではプライベートバンキングは不可能だ」との判断が働いたものと思われます。

 

緩い規制と厳しい投資家保護が必要

 プライベートバンキングに適した金融制度とは、一言で言えば、「銀行等の金融機関に対する規制はなるべく緩やかにして、その代わり厳格な投資家保護制度を敷く」というものです。スイスやチャネル諸島等のオフショア金融センターでは、この考え方に従って制度を整えています(当サイトでも紹介している『ガーンジー島投資家保護法』に見られる通りです)

ところが、日本の金融制度はちょうどその逆であって、「金融機関への規制が厳しい一方で、投資家保護制度は未整備」という状態です。

 日本に欧米プライベートバンクの本格的な進出が見られない理由も理解できるというものでしょう。

幸い、日本でも海外銀行での口座開設が自由化されていますので、スイス等のプライベートバンクでは、日本人の顧客に対しては本国にある銀行で資金を受け入れる(従って、日本の銀行法の規制を受けない)形で、プライベートバンキング・サービスを提供することにしているのです。

 

富裕層の資金が向かうべき先とは?

 このように、「プライベートバンキングの本場」であるスイス等の銀行が「できない」と判断した「日本でのプライベートバンキング」を、シティバンクは何故しようとしたのか理解に苦しみますが、「無理を通した」上に「アメリカ的な利益至上主義」、さらに「日本の未整備な投資家保護制度」が重なった結果が今回の処分であったというのが、当方の見方です。

 シティバンクでは、プライベートバンキング部門を閉鎖するとともに、顧客を他の銀行に引き継がせる方針のようです。しかし、今まで述べたことからも推察される通り、このような日本の現状ではどの銀行・金融機関でも「本格的なプライベートバンキング」など望むべくもありません。さらに、日本の銀行の脆弱な財務体質に加えて、ペイオフの完全実施等を考慮すれば、国内にある富裕層の資産は行き場を失ったも同然と言えるでしょう。

 今後、これが「プライベートバンキングの本場」であるスイスに向かうのは、至極自然な流れであると思われます。

 

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