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中小企業・零細企業のエクィティ・ファイナンス

 

「返済しなくてもいい」資金調達

 「エクィティ・ファイナンス(equity finance)」という言葉をご存知でしようか。

 企業が資金調達する際に、銀行などからの融資に頼るのではなく、自ら株式などを発行して資金を集めることを「エクィティ・ファイナンス」といいます。

 返済の必要のない「自己資金」を得られるこの方法は、企業にとって理想的な資金調達方法です。

けれども、日本で「エクィティ・ファイナンス」といえば、従来「功成り名遂げた」大企業が行なうものと相場が決まっていました。

 例えば、バブル時代のエクィティ・ファイナンスは、上場企業が株高に乗じて行なったもので、中小企業・零細企業とは無縁のものでした。

 しかし、その考えも次第に変化しつつあります。

 

「中小企業」「家族経営企業」でも・・・

 いわゆる「未公開株」への投資が静かなブームを呼んでいることからも分かるように、「大企業とはいえないが成長性のある企業」へ投資しようという気運が高まりつつあるからです。

 実は、この傾向はアメリカではかねてより見られたものです。アメリカでは、日本なら「中小企業」「家族経営企業」の範囲にあるような会社の多くが株式を公開することで資金を調達しています。その中には外国企業もあります。

 なぜ、いわゆる「大企業」でなくても、「株式公開=エクィティ・ファイナンス」が可能なのでしょうか。

 

「株式公開」のハードルが低い

 それというのも、アメリカでは「株式公開」に向けて企業が越えなければいけないハードルがかなり低いからです。

「立ち上げてすぐ公開」というのも不可能なことではありません。「いつ公開するか」は、経営上の判断に属することですから、「うまくいく」と思えば立ち上げ直後から株式公開の手続きをとることができるのです。

 このように、まだ若い企業がエクィティ・ファイナンスで資金を調達することは、アメリカでは一般的なことだと言われています。

 

日本人が利用できる方法を追求

 「億単位」の「自己資金」が調達できるエクィティ・ファイナンス。未公開株ブームとはいえ、日本では、多くの企業にとってまだまだ敷居が高いのではないでしょうか。

 そこで、このコーナーでは、「株式公開」が比較的簡単なアメリカの制度を利用して、日本人/日本企業、しかも「中小」「零細」と呼ばれる企業が資金調達する方法について考えてみます。

 

「株式公開」とは?

 まず、「株式公開」という言葉についてですが、これは「不特定多数の公衆に対して株式を売り出す」ことを意味します。

 アメリカの株式会社は、大きく2つのタイプに分けることができます。

 1つは「公開会社」(public company)です。その株式は一種の商品として公開の市場で取引されていますから、誰でもお金を出せば買うことができます。つまり、「株主」となることが可能です。

「公開会社」となるためには、原則として(ということは「例外がある」ということですが)証券取引委員会への登録が必要で、登録後も四半期ごとに財務状況などの報告義務が生じます。

 もう1つは「非公開会社」で、特定少数の株主によって所有される会社をいいます。このタイプの会社には、証券取引委員会への登録、報告義務がなく、財務諸表を監査させる必要もありません。

アメリカではIKEADomino’s Pizza Hallmark Cardなどが非公開会社として有名なものですが、一般的に言ってこれら非公開会社についての信頼できる情報は限られていると言えます。

 そして、この「非公開会社」が「公開会社」となることを「株式公開」(go public)といいます。

 

「株式公開」は「上場」か?

 気を付けなければいけないのは、「株式公開」と言ってもニューヨークの証券取引所やナスダックなどの有名な市場に上場されることを必ずしも意味しないことです。

 アメリカ各地の証券取引所やナスダックにはそれぞれ上場基準があり、公開会社の株式といってもその基準を満たさなければ上場することはできません。「公開会社」すなわち「上場企業」ではない、ということです。

 

IPOとは何か?

 ところで、このように「非公開会社」が「公開会社」となる際に「初めて一般の投資家に向けて株式を売り出す」ことをIPO (Initial Public Offering, 最初の公募)といいます。

 会社がIPOを行なう際には、投資銀行に「証券引受人」(underwriter)としての業務を依頼するのが一般的です。

 「証券引受人」というのは、会社と投資家の中間に立つ仲買人のようなものです。投資銀行は、機関投資家などの意見を聞きながら会社とともに売出し価格を決定し、株式を買い取って(買い取らない場合もありますが)投資家に販売します。

聞くところによると、この売出し価格は一般市場での売買が始まった時に15%程度の値上がりが見込めるように設定されるのだそうです。ただし、このIPOで株式を買うことができるのは、一部の例外を除いて、機関投資家か大口の顧客です。アメリカでも、本当の「一般投資家」がIPO株を購入できるチャンスはごく限られています。

 

「錬金術化」するIPO

 一昔前までは、アメリカでも、ファンダメンタルズが強固な企業でなければこのようなIPOを行なうことはできませんでした。最近ではやや事情が異なり、IPOによる資金調達は、証券引受人という「優秀なセールスマン」を得て「会社の将来」という実体のないものを売るという「錬金術」的な様相を強めています。もちろん、日本の企業であってもIPO方式によってアメリカで株式公開することは可能です。

 

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