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インフレは絶対来る

 

 

 失われた10年、いや20年と言われてからというもの、政府はデフレ脱却を試みては失敗してきた。しかし、あえて断言しよう。デフレは終わる。インフレの時代が必ず来る。

 ただし、問題は、それがいつかということ。そして、それが「良いインフレ」であるか、「悪いインフレ」であるか、ということだ。

 

 「良いインフレ」とは、景気の拡大にともなう緩やかなインフレのことである。確かに、景気が拡大して収入が増えているのなら、多少の物価上昇は気にならないだろう。

 これに対して、「悪いインフレ」とは、景気がさほど良くならない、従って収入は増えていかないのに、それ以上に物価ばかりが高くなっていくことをいう。仮に、収入が全く増えない状態で年率10%のインフレが続くとしたら7年で物価は2倍。生活は相当苦しくなる。また収入が増えたとしても、物価の上昇スピードがそれより10%高ければ同じことだ。

 

 実は、中央銀行が大幅な金融緩和をすればデフレを終わらせ、インフレに転じることが可能だということは、経済学者の間でかねてから言われてきたことである。いわゆるアベノミクス(実態は、黒田日銀総裁頼みの「クロダノミクス」と言うべき)は、これを忠実になぞったものにすぎない。しかし、デフレ脱却はいいとしても、はじめは「良いインフレ」と見えたものが次第に「悪いインフレ」に転じていくことを防ぐのは、容易なことではないと思われる。

 それというのも、日本を覆う少子高齢化の波が、まさに真綿で首を締めるように、日本経済に利いているからである。

 

 日本の人口が減少に転じたと報じられてから久しいが、若年層の減少は全体の人口減少を上回る。さらにデフレ期における非正規雇用の拡大、教育改革の失敗などのせいで、スキルや能力を身に付けた高度人材も少なくなっている。となると、景気拡大により需要が増加しても、生産能力が需要に追い付かない可能性が高い。かといって外国人労働者を入れるといっても政治的な反発もあろうし、第一、日本人が満足できる品質のモノをすぐに作れるようになるとは期待できない。

このような不十分な生産能力は、結果的にモノ不足を生じ、「悪いインフレ」の引き金を引く可能性が高い。

景気が良くなることで多少出生率が上向いたとしても、人口増大にまでは至らないであろうし、仮に出生率が劇的に改善されても、生まれてくる子どもが生産年齢に達するのは何十年も先のことだ。それまでに、日本経済は相当酷いことになっているかも知れない。(ある試算によれば、このまま社会保障費が拡大し続けるなら、2060年には消費税率が60%になっていないといけないという。これが「悪いインフレ」でなくて何であろうか)

 

 

 もう一つの懸念材料が日本国債である。

 「日本国債は破綻する」「いや、破綻しない」という論争がある。仮に破綻しないとしても、国債金利は常に変動し、これに伴って国債価格も上下している。その変動が、現在われわれが想定しているよりも荒くなるのは当然あり得ることだ。そのとき、日本経済が「悪いインフレ」に陥っているとすれば、なおさらのことである。

 国債の過剰発行による政府の財政破綻を云々することは煽情的な話題であるが、一般の日本人としてはその前に銀行の破綻を心配したほうがいい。仮に国家が破産するという事態になれば、その前に破産する銀行が出ることは容易に想像できるからだ。しかも、国家が破産しないときでも、銀行は破産する。

 それというのも、日本の銀行の資産は、日本国債に偏りすぎているからである。

 

 かつては間接金融で高度成長を支えた日本の銀行だが、今や収益源と言えば、住宅ローンと国債の運用があるばかりだ。しかも少子化や若者の貧困化で、住宅ローンの伸びを期待するのは難しい。そうなると日本国債への依存度はさらに高まるだろう。政府にとっては国債の引き受け手がいるのは喜ばしいことだろうが、一方銀行は、日本国債の金利変動リスク、価格変動リスクをもろに被ることになる。こうなると金融機関でありながら、ファイナンスの基本である「分散投資」なんてあったもんじゃない。

そこに「悪いインフレ」が重なったとしよう。金利上昇局面では国債価格が下落し、銀行資産は大いに毀損されるだろう。そのために破綻する銀行が出ても決しておかしくはない。

 

 少子高齢化も、非正規雇用の増加も、そして日本の銀行資産が日本国債に偏っていることも、長期にわたるデフレの結果であると言えなくもない。その意味で、責任は金融当局を含めた日本の政府にあると言えるだろう。しかし、大事なことは、これが金融政策を変えたからといって劇的に改善するという性質の問題ではないということだ。

ところが、これらが解決しない限り、景気はたとえ回復しても、日本経済の首を締める真綿が一時的にゆるまるにすぎない。

「良いインフレ」が「悪いインフレ」に転じる前に、われわれは自分で自分の身を守る術を考えておかなくてはならない。

 

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